香りブーム
皆さんは「香り、匂い」には、どのようなイメージを持つでしょうか。
花から溢れる自然の匂いをイメージしますか?レモングラス、ラベンダー、ミントといったアロマの良い匂いをイメージするでしょうか?
実は意外にも、昨今の「香りブーム」となっている、いい匂いのする柔軟剤などの日常生活の匂いをイメージする方が多いのではないでしょうか?
けれども、いい匂いのする柔軟剤による「香りブーム」が巻き起こる中、実は匂いによる健康被害も多発しているのです。
今回は、知的障がいをもつ子ども達の支援をされているNPO法人 cocorowa 理事長 浅井先生に、匂いが及ぼす子どもたちへの影響について話を伺いました。
プロフィール
NPO法人 cocorowa
理事長
浅井 夕佳里
エジソン・アインシュタイン協会 研究所長。発達障害の子供たちの教育に長年携わり、子どもの発達心理教室やカウンセリングを行っている。
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五感の中で一番記憶に残りやすい「嗅覚」=「匂い」
私たちの脳は「匂い」を記憶しやすいという特徴をもっています。触覚、味覚、嗅覚、聴覚、視覚といった五感の中で、嗅覚が記憶に残りやすいのです。
少し専門的な話になりますが、脳は原始的で食欲などの本能的な行動や喜怒哀楽などの情動(感情)を担う「大脳辺縁系」と思考や思索等の知性を担う「大脳新皮質」があります。
大脳辺縁系には海馬という記憶をつかさどる器官があって、様々な情報は海馬に保管されます。
「匂い」は、鼻を通って、大脳辺縁系に直接届きます。五感の中でも嗅覚だけが海馬に直接情報を送ることができるのです。
そのため、匂い(香り)は、本能的な行動や感情に直接作用するという事が言えます。
例えば、老人介護施設で認知症の老人が、海藻の匂いを嗅いだ時に子どもの頃に歌っていた歌を歌いだした、といった事があります。この老人は幼いころ海の近くで育ったそうです。
このように匂いには脳と記憶や情動と密接に関係しているのです。
嗅覚が伝わる脳は自律神経に繋がっている
嗅覚が伝わる大脳辺縁系は、自律神経とつながっています。
自律神経は、心身のストレス・リラックスに関わり、良い匂いを嗅ぐとリラックスでき、逆に嫌な匂いだとストレスになる、という事です。
今成長途上の子ども達は、ママの匂いが愛情・優しさ・抱擁といった記憶になるでしょう。
将来、辛い事が起きても、ママの匂いを思い出すことで、気持ちを新たにすることができるでしょう。ですから、リラックスできる良い匂いを記憶に残したいものです。
健康を害する匂い。匂いが及ぼす現状
直接脳を刺激する「匂い」だからこそ、気を付けて欲しい匂いがあります。皆さんは、柔軟剤や消臭剤を日常生活で使っていますでしょうか?これらの匂いに包まれた生活をしていませんか?
ですが、この匂いで健康を害しているという報告があります。
国民生活センターによると、10数年前までの柔軟仕上げ剤は微香性タイプのものが主流ったのが、
2000年代後半から海外製の製品がブームとなったのをきっかけにして現在は香性を工夫した商品が増加していて、特に「柔軟仕上げ剤の匂い」に関する相談件数が増加している、と発表しています。
具体的には、匂いで気持ちが悪く、体調不良になる。咳が止まらなくなり、医師に複数の薬を処方された。頭痛がする。吐き気がする、といったものです。
「匂い」は化学物質という事実を忘れないで
柔軟剤や消臭剤や洗剤等を選ぶ際に皆さんが良い匂いと感じている「香料」ですが、天然のアロマやハーブのエキスを使うととても高価なものになってしまうため、化学的に合成した「香料」が使われています。
製品の成分表示には「香料」と書かれているだけなので、どのような物質を使っているかは私たち生活者には不明ですが、石油由来の物質を合成し、高い温度をかけたり反応させたりして様々な匂いを作り出します。
この化学的に合成された物質の匂いは、化学物質が脳に直接届き、吸入して肺に入り、体内に侵入しているという事になります。
良い匂いと感じて使っている消臭剤や柔軟剤、芳香剤が化学物質過敏症の原因になっている、という報告もあります。
産まれたばかりの赤ちゃんには無添加の洗剤の使用を心がけるものですが、子どもが成長し1歳ぐらいになると、「そろそろ大丈夫」という根拠のない過信で、いい匂いのする大人と同じ洗剤を使ってはいませんか?
無添加の洗剤を使用する一番の理由は、赤ちゃんの皮膚トラブルを考慮してのことだと思いますが、実は、化学物質で作られた洗剤、柔軟は皮膚トラブルだけでなく、赤ちゃんの脳へ影響し、身体全体的の健康トラブルへと発展してしまう可能性があるのです。
成長したといってもまだ1歳。身体の機能はまだ未熟で未発達です。化学的につくられた匂いは良い香りかもしれませんが、無添加の洗剤や柔軟剤を使用することはお子さんの健やかな成長のためにはとても良い事なのです。
匂いが障がい児に及ぼした事例
私は発達障がいの子ども達の改善サポートを行っていますが、その中での「匂い」に反応した事例をご紹介したいと思います。
「漂白剤を使った日は1日中奇声がでる」「多動の子が新聞の折り込みチラシの匂いを嗅ぐと急におとなしくなり、倒れる」「蛍光色のTシャツを着ると多動になる」「柔軟剤を使った衣類を着ると目が合わなくなる」等があります。
それぞれ、何故問題行動を起こすかを調べた結果これらの「匂い」に反応していたことが判明しました。
化学的な「匂い」は脳への影響度がとても高く、言動や行動に影響がでるという事が確実に存在しています。
洗剤・柔軟剤、適切な量の使用を守って!
化学的な香料が脳に刺激を与える。といっても、体調不良を訴えたり、異常反応を起こしてしまうのは、一部の事例です。
今まで何の問題もなくいい匂いのする柔軟剤を使っているという方も、もちろん多数いることでしょう。
ただし、これだけは守ってほしい事があります。それは、適正な使用量です。
もっと衣類に匂いを残したいとして、記載量の2倍を使っている方が4人に1人いるというデータがあります。
この行為は、適正以上の量を毎日少しずつでも摂取してしまうという事になり、体内に蓄積され続けて、結果的に子どもたちの身体に多大な影響を及ぼすことになりかねないのです。
私は、発達障がいの子ども達を指導する際には、危険な「匂い」を避けるよう、徹底的に指導しますが、健常な定型発達の子ども達にとっても、決して良いものではありません。
子ども達の身体と脳を守るためにも、柔軟剤の使用は記載量を必ず守るようにしましょう。
そして、もし化学物質が与える子どもへの影響が恐ろしいと感じるのであれば、天然成分の物、無香料の物を使用するよう心がけましょう。
子どもたちの健やかな未来のために、親ができる事を少しでも多く生活の中に取り入れて行けるといいですね。
参照元:http://spotlight-media.jp/article/259514755084365792